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令和5年6月度部会を開催しました

 
開催日:令和5年6月13日
会 場:TIME SHARING 六本木6DMJビル9Aおよびオンライン

 

 6月13日、一般社団法人余暇環境整備推進協議会(余暇進/佐藤正夫代表理事・会長)は、令和5年6月度の理事会・部会を開催した。

 今回は大阪で2029年開業を目指す国内初のカジノ計画をめぐり、国民の関心をあらためて集める依存問題について、遊技業界においては遊技者本人ならびに本人関係者向けの電話相談事業を手掛ける認定特定非営利法人リカバリーサポート・ネットワーク(以下:RSN)の西村直之代表理事の講演を聴いた。また会員プレゼンテーションとして株式会社アミューズメントプレスジャパン(以下:APJ)から同社が手掛ける共同調査「パチンコ・パチスロプレイヤー調査2023」の紹介が行われた。

 

会員プレゼンテーション 株式会社アミューズメントプレスジャパン
意思決定の精度を高める市場動向理解
~市場をマクロで捉える『パチンコ・パチスロ プレイヤー調査2023』活用のススメ~

アミューズメントプレスジャパン 田中剛氏(左)

 APJ執行役員専務の田中剛氏から本調査の概要とデータの価値とその活用方法について紹介があった。本調査の特徴はパチンコ・パチスロノンユーザーを含め4万人分の回答を集計しており、余暇市場全体の中でパチンコ・パチスロへの参加状況という分析がなされている点にある。

 田中氏からは、ひとつの分析結果として他の公営競技が売上を伸ばしているが参加人口自体は伸長していない点を着目。パチンコ・パチスロの参加人口と構造を比較して「公営競技の方が参加人口に占める若年層比率が高く、1年未満の新規参加者も多い。参加者の入れ替わりが客単価の上昇が売上増につながっている。パチンコ・パチスロはその両方で公営競技を下回っている」と紹介し「遊技の面白さだけを伝えるだけでは参加を阻害しているイメージは変わらず、増客しないだろう。ノンユーザー調査を通じて、パチンコ・パチスロのどういうイメージが参加を阻害しているかを突き止めた上で、イメージを変えていくというアプローチが必要だ」と話があった。

 本調査はデータ版も販売している。立地により商圏が異なるパチンコホールにおいて自店の周辺環境を分析するには「自ら仮説を立て検証していくデータリテラシーが求められる。このデータ版を素材に、分析スキル伸ばす社内研修をおこなってはどうか」といったデータ活用の方法についても紹介があった。

《参考》

 パチンコ・パチスロプレイヤーはギャンブルレジャー参加率が高い

 

講演 RSN活動の沿革と課題
講師 認定特定非営利活動法人ぱちんこ依存問題電話相談機関
   リカバリーサポート・ネットワーク代表理事 西村直之 氏

講演はオンラインで実施(左)、沖縄県中頭郡西原町にあるRSN(右)

 西村代表からRSN設立当初から今日までの活動内容と、精神科医としての見地から問題ある行動習慣(Problem Gambling)に関する講演を聴いた。RSNの今般のギャンブル等依存症対策が台頭して来る以前の1990年代後半に社会問題化した多重債務や駐車場における子どもの放置事故を背景に、遊技業界の有志から遊技へののめり込み問題という課題が提起されたことがきっかけとなっている。現在はパチンコ・パチスロ産業21世紀会もRSNを支援するまで業界全体の取り組みへと拡大している。

 RSN設立当初の電話相談は相談者からの相談内容に鑑みた支援先の紹介を行ってきたが、今日では相談者は問題を抱える本人が多く、繰り返し相談を受けるケースも多いことが紹介された。西村代表は「問題ある行動習慣の影響や結果は個人の問題だけではなく、仕事や対人関係、法律、財政(家計)など多岐にわたり影響を及ぼすため、RSNの電話相談では本人が依存症であるか否かといった医療的モデルをとらず、相談者はなぜこれほどの問題を抱えてしまったのか、まずどの問題を今以上にこじらせないようにすれば良いのか、そのためにどのような支援を受けた方が良いのかを考え、相談者の状況が悪化しないようにその手伝いをすることを意識して取り組んでいる」と報告があった。

 海外におけるゲーミング問題への対応でも現在の日本のように、かつては医療(治療)モデルから始まっているが、本人が問題行動を起こす背景を丁寧に深掘りすることで対応や対策を打ち出すといった全体のフレームづくりを進めてきている。現在ではゲーミング産業関係者は、利益相反とならないようプレイヤーに安全に遊んでもらうこと(自発性)、地域産業として根付くための社会貢献(CSR)、地域や産業と一緒に発展するための政策立案(協働性)を柱に、Responsible Gaming(以下:RG/レスポンシブル・ゲーミング)の構成要素(科学的に合理化かつ検証可能である※10項目のフレームワーク)を打ち立て、問題行動を起こさない環境づくりを図っている。ただし「近年はインターネット技術や仮想通貨の普及でスポーツベッティングが盛り上がり、ゲーミングへの参加者の入れ替わりがあり変化が著しい。だからこそ、誰がどのようにといった参加状況の調査は非常に大切だ」と個々のフレームワークは確立するものではなく、変化することが大切だと西村代表は話した。

※10項目=調査、従業員プログラム、小売業者プログラム、ゲームの設計、リモートゲーミングチャンネル、広告とプロモーション、プレイヤー教育、治療の紹介、利害関係者の連携、報告と評価

 RGに対して現在遊技業界が取り組んでいる状況を各フレームワークに当てはめると、十分に機能できていないことは、業界規模がかつてより縮小しているにも関わらず業界に対する国民の批判的な声が続いていることからも推し量られる。西村代表は「RSNは電話相談によるエンドユーザーのサポートをしているが、その上に位置するようなフレームワークを構築していくことができるのか、国民の余暇としてパチンコ・パチスロの位置づけを産業全体でしっかりと考えて欲しい」と述べ、講演を結んだ。

《参考》

リカバリーサポート・ネットワーク

安心娯楽宣言(パチンコ・パチスロ依存問題特設サイト)

Responsible Gaming(RG)とは