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平成30年6月度部会を開催しました
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- 2018.06.20
開催日:平成30年6月12日(火)
会 場:在日本韓国YMCA アジア青少年センター(東京都千代田区)
来場者:86名
一般社団法人余暇環境整備推進協議会(余暇進/笠井聰夫代表理事・会長)は、東京都千代田区の在日本韓国YMCA アジア青少年センターにおいて、第172回理事会ならびに6月度部会を開催した。
今回の部会ではギャンブラー兼作家の森巣博先生を講師に招き“『カジノ法案』では語られない「不都合な真実」ハイローラーとジャンケット”とのテーマで講演を拝聴した。余暇進ではこれまで「のめり込み・依存」問題について精神科医の西村直之先生(リカバリーサポート・ネットワーク代表)、認定NPO法人ワンデーポートの中村努施設長、脳科学者の篠原菊紀教授(諏訪東京理科大学)に講演を依頼。同問題について見識を深めて来た。今回は依存問題研究講演第4弾として、ギャンブラーとしての知見を持つ森巣先生から、プレイヤー側から見る依存問題や海外カジノビジネスの状況等について話を聞いた。
また講演前には、会員プレゼンテーションとしてサン電子株式会社からシステム横断型業界統計サービス「TRYSEM」と「シフト作成サービス」、株式会社アミューズメントプレスジャパンからギャンブル等依存症問題を取り上げた書籍「ギャンブル等依存問題 正しい理解のために」の紹介があった。
会員プレゼンテーション
サン電子株式会社「TRYSEM」「シフト作成サービス」
説明の担当は同社サンタック事業部の北瀬紳一郎氏。「TRYSEM」はサン電子以外の複数のシステムも含めた複合運営サービスとして、営業情報を様々な角度で分析、テーマを設けた提案が得られるシステム横断型業界統計サービス。営業情報に基づく稼働貢献状況の閲覧や中古機売買、機種データベースといった機能のほか、利用店舗が自店データと連動することで、機種入替に役立つ機能も搭載している。独自の機種比較により過去データを確認し直す手間も省略できる上、性能バランスも参照できる強みを持っている。
特徴的な帳票のひとつとして「日別データ」や「貸出単価別稼働比較」などがあり、このうち貸出単価別稼働比較は、貸玉料金毎(パチンコなら4円や1円など)に当該機種がどの程度のパフォーマンスが見込めるのか、その判断材料を提供している。
引き続き同社営業戦略部の長谷川武亮氏から「シフト作成サービス」の説明が行われた。同サービスは従業員がスマホなどから希望する勤務時間を届け出ることが出来、シフト作成者は従業員スキルと平行して適切なシフト管理が行えるというもので、シフト作成者の労務負担を軽減し、その分、シフト調整が必要な際のコミュニケーション等に充てることが可能となる。従業員スキルの項目設定は任意に行うことができ、必要なスキルを持った人員が揃っているのか否かを可視化できるのも特徴となっている。働き方改革がキーワードとなっている中、負担の軽減と時間の有効活用は、従業員・管理者双方で求められる。同サービスを利用する効果はシフト作成にかかる労務負担の軽減のほか、オプションにより勤怠管理や給与計算もできる。
株式会社アミューズメントプレスジャパン
書籍「ギャンブル等依存問題 正しい理解のために」
同社の野崎太祐氏から書籍「ギャンブル等依存問題 正しい理解のために」の紹介が行われた。本書タイトルのとおり、ギャンブル等依存問題について正しい理解を啓蒙するべく、「ギャンブル依存症という病気は存在しない」という医学的定義の話から、病気と決めつけられることによる弊害を支援現場から声を届けるなど、「社会的関心を集めているギャンブル等依存とは何か」を様々な視点で伝えている。本書の紹介にあたって野崎氏は「ギャンブル等依存について国内に専門家が少ない中で、国会等で議論されている実態がある。遊技業界にはRSNが12年、ワンデーポートが16年もの支援活動を続けており、今回、私どものこれまでの取材の成果をまとめたのが本書となっている。ひとりでも多くの業界人に正しい理解をしていただき、店舗の従業員がお客様から依存問題を問われた時に正確に対応できるよう努めていただければ幸いである」と話した。
講演『カジノ法案』では語られない「不都合な真実」
ハイローラーとジャンケット
ギャンブラー兼作家 森巣 博 氏
森巣先生は自他ともに認める博奕打ちで、国内で初めて“兼業作家”の肩書を持つ稀有な人物。多彩なジャンルで多くの著書を執筆する。「無帰属の志」を縦軸に、ギャンブル体験を横軸にした、独特かつ明晰な文章には定評がある。
その森巣先生からは講演当日現在、国会で審議されているギャンブル等依存症対策基本法案、IR実施法案に対する所感も含め“『カジノ法案』では語られない「不都合な事実」ハイローラーとジャンケット”との演題で講演を拝聴した。いわゆる国内カジノの誕生とそれにあわせて懸念が持たれているギャンブル等依存症について「ギャンブル依存症は学問として確立したものがない」と指摘。現在、ギャンブル依存症とされる調査結果は米精神医学会が出版した「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM)に基づくもので、DSMを翻訳した調査票により調べた結果が国内統計に用いられている。DSM自体は精神障害や精神疾患をモデル化するものであっても、その診断結果に対する妥当性・信頼性については議論が続けられている。
森巣先生は「私は自らをギャンブル依存と言って憚らないが、DSMの調査10項目には3つしか該当しない。また調査内容を俯瞰すると、ギャンブルに負けなければ依存症ではないと言っているようにも見える不思議さがある」と述べつつ「私は極めて少数派になるのだろうが、依存症については、すべての良き(好き)事には依存性があり、そこに快楽や愉悦があるから傾斜もするし学習もするのだと考えている。自身が不快に感じることに依存する人はいない」と語った。
一方、ギャンブルが持つ依存性、欲求の強さは例えるならば、日本において人が持つ三大欲求(食欲、睡眠欲、性欲)と言われるものを凌駕する欲求だとする説があり、それほどギャンブルが持つ欲求は魅力的なものであると話した。森巣先生は「依存しているからやめたいとは思わない。いかに依存状態を維持するのかを考え、自らを厳しく律し、規則正しい健康な生活リズムを送ることを心がけている」と、自らのワークライフバランスを紹介した。
このギャンブルが持つ魅力に対して現在議論されているカジノへの入場回数制限や入場料の徴収といった方策が、欲求を抑えるものには至らないだろうと述べ「複雑な問題であることを認識し、簡単な答えがないことを前提とした取り組みが必要だ。私の意見としては、ギャンブルを楽しむためにはどうするのかを志向して向かい合うべき問題で、突き詰めれば教育の問題なのだろうと考えている」と話した。
国内で議論されているカジノとギャンブル等依存症が想定しているプレイヤー像が主に一般国民であるのに対し、本講演の趣旨は実際のカジノビジネスがどのように成立しているのかといった実態を主眼に、以下の内容について話があった。
カジノ収益の大半は一部のハイローラーによってもたらされる
海外カジノの事業者はプレイヤーを三階層に分類し、もてなしている。ひとつは一般フロアで遊ぶ「グラインド・プレイヤー」、次に高額な消費をしフロアもグラインドと別けられる「プレミアム・プレイヤー」、そしてプレミアムを超える存在である「ジャンケット・プレイヤー」に区分される。講演ではプレミアムとジャンケットの両プレイヤーが消費する金額に明確な基準は存在しないとしながらも、大まかな目安を口頭で示しつつ、カジノ事業者の収益の大半はプレミアム以上のプレイヤーから上がっているものだと紹介。そしてプレミアムやジャンケット・プレイヤーがどのような人たちなのか、またカジノ事業者がこれらプレイヤーをどのようにもてなしているのかを、カジノ関係者や自身の見聞も交えて話した。
カジノ事業の収益性で見た場合、不特定多数で少額消費のグラインド・プレイヤーへの対応には設備・人件費などの必要コストを要するが、人物が特定でき、かつプレイヤー階層が上がるほど、消費金額も天井知らずに近づくハイローラーを相手にする方が、投資効率が高くなるというのがカジノの特徴的な収益構造となっている。
ハイローラーと呼ばれる人物がどのような人達なのか、カジノ関係者以外でも有名となった人物たちを取り上げ、その逸話を紹介しながら、講演ではジャンケットと呼ばれる仲介業者の存在とその役割についてふれた。
ジャンケットと呼ばれる存在は、その派生がいつの時代であるのか定かではないと前置きしつつ、ハイローラーのカジノ滞在中におけるスケジュールの一切のサポート、契約先カジノへのハイローラーの招致、カジノで使う資金の貸付も含め様々な仲介を行っているのがジャンケットであると解説。またカジノ事業者とジャンケットは一対の存在ではなく、ジャンケットを認めるかはカジノ毎の判断で行われていると話した。
カジノの収益モデルからジャンケットの役割まで、ビジネスの側面からカジノを語った森巣氏は、上述の内容をふまえ、国内カジノ誕生により、どのようなプレイヤーが参加するのか、どのくらいの集客規模になるのか、海外からのプレイヤー招致は進むのか、などの視点を、独自の情報力と分析による将来見通しを披瀝。聴講した部会参加者から強い関心を集めた。