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2018秋季セミナーを開催しました
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- 2018.12.6
開催日:平成30年11月20日(火)
会 場:ホテルインターコンチネンタル東京ベイ(東京都港区)
来場者:181名
一般社団法人余暇環境整備推進協議会(余暇進/笠井聰夫代表理事・会長)は、東京都港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイにおいて、第176回理事会ならびに平成30年度秋季セミナー「~平成の遊技業界、その歩み~」を開催した。
秋季セミナーの講演に先立ち笠井会長から開会の挨拶、警察庁生活安全局保安課の齊藤敬之課長補佐による行政講話が行われた。今年度の秋季セミナーの特色は、登壇者はすべて余暇進メンバーによる2本のディスカッションという構成にある。第一部は、平成11年に業法の制定を掲げて設立した当協議会の今日までの歩みを振り返るとともに初心を確認するべく、発足初期から当協議会の原動力となっているメンバーから余暇進活動に懸ける想いが伝えられた。第二部では、ホール・メーカーの現役経営者が直面する種々の課題に対して、自社の成長ビジョンやそのための取り組みを中心に意見交換を行った。
いずれも当協議会の推進力を高めるとともに、業界発展に欠かすことのできないテーマを取り上げており、平成の元号から新たな元号に変わる節目の年を迎えるに際し、幅広い業種が参画する当協議会の会員企業に向けて、より一層の一体感を生み出す内容となった。
開会挨拶 笠井聰夫 代表理事・会長
「昨今の業界を語る時、当然ではありますが、ややもすれば厳しい、悲観的な側面に目が向けられがちですが、他方で、働き方改革が進行して大手企業の中には新たに週休3日制に踏み切ったところもあり、今後はAIやITの普及でますます個人の可処分時間が拡大する、さらには、団塊世代の高齢化は新たな余暇需要の拡大をもたらす等々、これぞチャンスといえる側面も少なくありません。
目を広げれば、悲観要素ばかりでなく、楽観要素も多々あるわけであります。いまは厳しい状況を受け身でなく前向きにとらえてチャレンジするということが大事なのだろうと思います」
第一部ディスカッション「伝えたい業法への想い」
余暇進発足当初から余暇進を牽引して来た金海副会長、髙山顧問と、長年に亘り執行部・理事として当協議会を支える香月常務理事、金村常務理事がパネリストとして登壇。司会は執行部と共に中心メンバーとなって業法試案を作成しその制定に尽力して来た渡邊理事が務めた。
余暇進発足時の業界が恒常的に抱えていた問題とは何だったのか。司会の渡邊理事から話を向けられた金海副会長は「当時、我々がこの業界に強い危機意識を感じていた問題点は(同一の法律であるにも関わらず)その時々の行政の担当官によって、解釈および運用が異なり、このため指導の内容も変わっていたことが挙げられる。曖昧な解釈で営業を続けていくことに強い危機意識を感じていた。そこで全国で一律の運用がなされるよう法を整備することが大切だと考えた。法律を作り変えるということは、それだけ我々にとっても遵守する責任が発生するが、法を守る責務と法の中で守られる側面もある。法律によってしばられるといったマイナスのイメージばかりではないと捉えて欲しい。当時から我々は法律を遵守し営業を行うことが大切だと考えた。それは今でも変わらない。業界全体が共通の危機意識をもって今の世代が取り組まなければ、次の世代も同じ問題を抱えていくことになる。だから一歩ずつでも前進していきたい、というのが私の気持ちだ」と話した。
次に業界の時代背景として当協議会が発足した平成11年当時はどのような時代であったのか、金村常務理事は「行き過ぎた射幸性が社会問題となり、80万台もの自主撤去を進めたのが平成8年。確かに平成に入ってから業界の売上規模は大きく伸びた。自主撤去を境に、ホール企業には、より営業の中で売上を求める者と、企業としての在り方を考え、組織化とビジョンを持つ者に別れていったように思う」と述べた。この意見に髙山顧問も同調するように「遊技機メーカーの中には株式公開する企業が生まれた。右肩上がりの業績にどこか浮かれていた感じが漂っていた。だからこそ大きくなった業界は襟をただし健全営業が大切だと認識していた」と振り返った。
司会の渡邊理事は「問題の根本をさかのぼって考えるために余暇進という組織が作られ、環境整備という新しい理念を掲げた。射幸性の問題と賞品問題は、風営適正化法では解決できない問題。業界が正業化するためには、それら問題を健全化しなければならないと考えたのが余暇進だった。それならばと、私は風営適正化法の改正を目指すのではなく、業法による環境整備が必要だと提案させてもらった」と今日まで続く当協議会の基本スタンスが形作られた経緯を紹介した。
書籍「風営適正化法令におけるパチンコ営業運用上のQ&A」(風営適正化法Q&A)を改訂しながら刊行し続けている。これは金海副会長が前述した、いわゆる行政指導の温度差の改善に資するものとして、また目下の遵法営業において必須であると当協議会で考え刊行をはじめた事業となっている。
風営適正化法Q&Aの刊行により、ホール経営企業をはじめ関連業種の社内研修等で積極的に用いられるようになったと各々のパネリストが活用状況を紹介。香月常務理事は「非常に価値あるものになったと考えている」として、その理由を「現場と行政の間で役に立つものとなった」と客室内構造物の高さ制限や賞品陳列の在り方、調光器の使用など数々の解釈において共通理解を生む端緒となった点への価値を強調した。
この後、話題は射幸性や賞品問題といった風営適正化法上で抱えている問題から、昨夏当協議会から行政に提出したパブリックコメントや業法試案といった余暇進活動についても話が及んだ。
第二部ディスカッション「産業を次代につなぐために」
当協議会発足の理念を継承しながら理事会でも活躍している金海常務理事、大泉理事、大原理事、佐々木理事、朴理事がパネリストとして登壇。司会は田中事務局長が務めた。企業経営者として、事業活動を通じて感じる業界活性化への懸案や、経営課題に対する自社の取り組み事例などを主要テーマに意見交換が行われた。
一番の話題は業界の景気についてとその見通し。少子高齢化や娯楽の多様化といった客観的な情報から業界全体の規模が縮小するといった見通しは、いずれのパネリストも共通した見解であったが、悲観に終始する意見は無かった。佐々木理事は「業界として努力で改善できること、できないことを仕分けし、自らの努力によって改善できることに注力するべきではないかと考えている」と発言した。よりポジティブな見解として大泉理事は「娯楽の多様化は業界へ影響を与えているが、自社で音楽フェスを主催した経験や、社会現象にもなっているハロウィンの仮装に熱狂する若者を見ると、リアルの中でエネルギーを発散したいという志向は強い。パチンコ・パチスロもリアルの中にある娯楽であると私は考えており、その魅力を若者へ届ける方法を考えていきたい」と述べ、業界規模の縮小が遊技自体の魅力低下ではないと捉えていると語った。
若年層を取り込む上で、現状にプラスする魅力の創造といった点で、佐々木理事から「賞品提供が有体物に限られているといった制限が、客層を狭めていると考えている」、「今はリアルとバーチャルの双方を楽しむ時代。様々な業界が若年層の取り込みを競っている中、ホールはデジタルコンテンツの提供ができない」と他業種との競争力上で不利があると指摘した。
「余暇時間の使い方、その選択肢に入らなければ業界に先はない」と話した朴理事は自らが高校生だった頃はまだパチンコが・パチスロが18歳になったら遊びに行ける魅力的な場所に映っていた、と振り返った。「今は少しの時間ならばスマホを使った暇潰しの方法があるのは事実だが、他方でパチンコ・パチスロの情報に接触する頻度が昔と比べ極端に下がっている点も、選択されない理由にあるのではないか」と情報の接触機会という観点では、マス広告の代表であるTVCMにおけるパチンコの広告出稿が減って、スマホゲームの出稿量が増えて行ったのと、業界の縮小、スマホゲームの隆盛は無関係ではないと思うと述べ、パチンコ・パチスロの魅力を伝えるための広告宣伝はメーカーをはじめ作り手に期待したいとの意見が聞かれた。
企業経営を取り巻く環境としては景気動向以外にも、依存問題への対応や労働力不足、働き方改革にともなう労働環境の整備、消費増税といった企業組織の内政にも関わる課題も抱えている。経営者として見つめている先はどこなのか、何に重きを置いているのかといった話題に移った。
これらの点について金海常務理事は「縮小が続くという見通しの中、企業としては財務対策の強化が優先だと考え、この数年取り組んでいる。また私は企業理念を新たに打ち立て、目指していることをわかりやすく、かつ全社に浸透させるところからはじめた。これは私自身の自己紹介の意味も込めている」、「何をしようにも人材が重要になることは間違いなく、当社では『人財開発課』を置いている。人は企業の財産という位置づけだ。新卒採用を始めて22年、当初は高い離職率だったが、今は年々低くなっている。企業の文化を作るのも人であるし、仕組みを機能させるのも人であることは間違いない。」と話し、柔軟かつ能動的な集団を作っていくことが企業の存続に必要なことだとの考えを述べた。
大原理事は「当面、業容の拡大を計画していない分、店舗単独の競争力を高めることに力を集中している。端的には地域一番店を目指している」とシンプルな目標を掲げることで社内意識の統一性を高めていると話した。業務効率等内政面については「やはり人の重要性は強く認識している。業務上で発生した社内の不況和音に関しては注視している。社員間で起った業務をめぐるトラブルには極力介入し、都度答えを出すようにしている」と語り、意識の高い業務を遂行するべく、フットワークも使っていると紹介した。
他のパネリストも人材に関しては非常に関心が高く、佐々木理事、朴理事は「当社だけでなく、業界、業種も問わず活躍できる人材に育って欲しい」と社内で試行を続けていると話し、大泉理事は「私自身は年を経て様々な経験を得た分、昔と比べチャレンジ意欲は落ちているように感じてきている。ミレニアム世代の考えは発想が豊かで優秀である部分もあると感じており、若い世代から出て来た発想を経営者として如何にサポートできるのか、提案の内容を理解していこうとする姿勢を大切にしていきたい」と話した。